親の介護保険の申請は、家族が代わりにできる。本人が窓口に行けなくても、入院中でも申請は出せる。家族が動けないときは、地域包括支援センターなどに手続きを代わってもらう方法もある。
この記事では、要介護認定の申請を家族が初めて進めるときに出てくる疑問に、順番に答えていく。誰が申請できるか、何を持って行くか、申請から結果まで何日かかるか、訪問調査では何を聞かれるか、などだ。
先に一つだけ断っておく。申請書の様式、受付窓口、郵送やオンラインに対応しているかは市区町村ごとに違う。この記事は全国共通の仕組みと、いくつかの自治体の案内を例に書いている。実際に申請するときは、親が住んでいる市区町村のページを必ず確認してほしい。探し方は記事の最後に書いた。
※制度の内容は2026年10月時点で、公式ページで確認できた範囲のものだ。
要介護認定の申請は、本人または家族が市区町村の窓口に出す。本人や家族が出しに行けないときは、次の事業者などに手続きを代わってもらえる(=申請代行)。
この4つが、介護保険法で申請を代行できるとされている事業者だ(厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会 第122回 資料4、2025年6月30日)。自治体の案内でも同じ内容が書かれている(船橋市、横浜市、北九州市)。益田市の案内では、成年後見人も代行できる相手に挙がっている(益田市 介護保険パンフレット)。
同じ厚労省の資料によると、令和6年度の認定申請のうち78.4%は代行による申請だった。本人が自分で窓口に行かない申請のほうが、もともと多数派ということだ。
近所の人や知人など、家族以外の個人がどこまで手続きできるかは、はっきり一律とは言えない。船橋市のページでは、家族に限らず「任意代理人」が委任状などで代理権を示して手続きする場合の確認方法が書かれている(船橋市 マイナンバーの取扱い)。ただ、受け付けの扱いは自治体で違いうる。家族が近くにいないなら、親の住所を担当する地域包括支援センターに代行を頼むのが確実だ。
申請そのもの、訪問調査、主治医意見書の作成に本人の費用負担はない。北九州市の案内は「申請に本人の費用負担はありません」と明記している(北九州市)。
介護保険でサービスを受けられるのは、次の2つに当てはまる人だ(船橋市)。
| 区分 | 年齢 | 申請できる条件 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 原因を問わず、介護や支援が必要になった |
| 第2号被保険者 | 40〜64歳(医療保険に加入) | 老化に伴う病気(特定疾病)が原因で、介護や支援が必要になった |
特定疾病は16種類が政令で決まっている。がん(回復の見込みがないと医師が判断したもの)、関節リウマチ、初老期における認知症、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患、骨折を伴う骨粗鬆症などだ(厚生労働省 特定疾病の選定基準の考え方)。40〜64歳の人がこれ以外の原因で介護が必要になった場合、介護保険の対象にはならない。
申請から結果が届くまでは、おおむね次の順番で進む(厚生労働省 要介護認定に係る制度の概要、船橋市 申請から結果通知までの流れ)。
| 順番 | 何が起きるか | 家族がすること |
|---|---|---|
| 1. 申請 | 市区町村の窓口(または郵送・オンライン)に申請書を出す | 申請書を書いて出す |
| 2. 訪問調査 | 認定調査員が自宅や入院先に来て、心身の状態を聞き取る | 日程を決め、できれば同席する |
| 3. 主治医意見書 | 市区町村が主治医に意見書の作成を直接依頼する | 主治医に申請したことを伝えておく |
| 4. 一次判定 | 調査結果と意見書をもとにコンピュータで判定する | なし |
| 5. 二次判定 | 保健・医療・福祉の専門家でつくる介護認定審査会が判定する | なし |
| 6. 結果通知 | 認定結果と新しい被保険者証が郵送で届く | 内容を確認する |
訪問調査の日時は、申請書に書いた電話番号に連絡が来て決める(船橋市の場合)。主治医意見書は市から医療機関に依頼し、医療機関から市へ直接返送される。家族が意見書を受け取って届ける必要はない。
要介護度は「病気の重さ」ではなく「介護にどれくらい手間がかかるか」で決まる。そのため、病状と要介護度が一致しないことがある、と厚生労働省は説明している(厚生労働省 要介護認定はどのように行われるか)。
結果は原則として申請から30日以内に通知される。30日を超えるときは、理由と認定の見込み日を書いた「延期通知」が届く(船橋市)。
ただ、実際にはもう少しかかることが多い。厚生労働省が公表しているデータでは、令和6年度に申請された分の全国平均は次のとおりだ(厚生労働省 認定審査期間等の公表、令和6年度分)。
| 期間 | 全国平均 |
|---|---|
| 申請日から二次判定日まで | 39.9日 |
| 認定調査の依頼から調査の実施まで | 11.1日 |
| 主治医意見書の依頼から入手まで | 17.9日 |
| 申請から30日以内に二次判定まで終わった割合 | 22.8% |
「申請から訪問調査まで」の日数そのものは公表されていないが、調査の依頼から実施までが平均11.1日だ。同じ資料には市区町村ごとの日数も載っているので、親の住む自治体の数字を見ておくと目安になる。
新規申請と区分変更申請では、認定の効力は申請日にさかのぼる(船橋市 要介護認定の有効期間)。結果を待っている間に使ったサービスも、条件を満たせば保険の対象にできるということだ(後述の暫定ケアプラン)。
逆に言えば、さかのぼるのは申請日までだ。申請前に使ったサービスにはさかのぼらない。迷っているなら、先に申請を出しておいたほうが損が少ない。
なお、申請日の扱いは提出方法で変わる。船橋市では、窓口は提出した日、郵送は市役所に届いた日、オンラインは送信した日が申請日になる(船橋市 申請日の取扱い)。
更新申請は扱いが違い、効力は前回の有効期間が終わった翌日からになる。更新申請は有効期間満了の60日前から出せる。
自治体ごとに細かい違いはあるが、横浜市・船橋市・北九州市の案内に共通しているのは次のものだ。
| 持ち物 | 補足 |
|---|---|
| 要介護・要支援認定申請書 | 窓口にあるほか、自治体のサイトから印刷できることが多い |
| 介護保険被保険者証(原本) | 65歳になると交付される。なくしていても申請は受け付けてもらえる(横浜市) |
| 医療保険の加入情報がわかるもの | 40〜64歳の人に必要(下で詳しく書く) |
| 主治医の医療機関名・住所・医師名がわかるもの | 申請書に書く。診察券などで確認しておく |
| マイナンバーの確認書類と身元確認書類 | 下で詳しく書く |
2024年12月2日に健康保険証の新規発行が終わったことで、40〜64歳の人の医療保険の確認方法が変わった。船橋市では、次のどれかで確認している(船橋市 医療保険加入情報の確認について)。
北九州市のように、市が公簿などで医療保険の加入状況を確認し、確認できない場合だけ書類を求める自治体もある。65歳以上の人は、横浜市の申請書の案内では医療保険証の提示は不要とされている。
申請書にはマイナンバー(個人番号)の欄がある。家族が代理で出すときは、船橋市の場合、次の3点を確認される(船橋市 マイナンバーの取扱い)。
ただし、本人が認知症などで代理を頼む意思を示すのが難しい場合は、マイナンバーを書かずに申請できると船橋市は案内している。横浜市の申請書の記入例にも「未記入でも申請の受理は可能」とある。番号がわからないことで申請をあきらめる必要はない。
横浜市の記入例(横浜市 要介護認定についてから入手できる)を例に、家族が代わりに書くときに迷いやすい欄をまとめる。様式は自治体ごとに違うので、欄の名前は目安として読んでほしい。
40〜64歳の人は、特定疾病名を書く欄もある。区分変更申請のときだけ「申請の理由」を書く欄がある様式もある。
申請書に書いた主治医に、市区町村が意見書の作成を依頼する。ここで注意したいのは、主治医が意見書を書けない場合があることだ。船橋市は次のような例を挙げ、申請前に主治医へ相談するよう案内している(船橋市)。
かかりつけ医がいない場合は、市が指定した医師の診断を受ける形になる自治体がある(益田市)。複数の病院にかかっていて誰を主治医にするか決められないときも含め、申請前に市区町村の窓口へ相談しておくと手続きが止まりにくい。
原則として、調査対象者1人につき認定調査員1人が、1回で調査を終えることになっている(厚生労働省 認定調査員テキスト2009改訂版(令和6年4月改訂))。新規申請の調査は、市区町村の職員か、市区町村から委託を受けた法人の調査員が行う。調査員には守秘義務がある。
所要時間は自治体の案内によって幅がある。刈谷市は45分〜1時間程度、十日町市はおよそ1時間〜1時間半としている(刈谷市 認定調査について、十日町市 認定調査を受けられる方へ)。
曜日は、刈谷市・十日町市・横浜市の案内とも平日の日中だ。土日や夜の調査に対応しているかは自治体に確認するしかない。都合の悪い曜日や時間帯を申請書に書ける自治体もある。
基本調査は全国共通の74項目で、次のように分かれている(厚生労働省 認定調査員テキスト)。
| 群 | 内容の例 |
|---|---|
| 第1群 身体機能・起居動作 | 麻痺や関節の動き、寝返り、立ち上がり、歩行、視力・聴力 |
| 第2群 生活機能 | 移動、食事、排せつ、着替え、外出の頻度 |
| 第3群 認知機能 | 意思の伝達、短期記憶、今の季節や場所の理解 |
| 第4群 精神・行動障害 | 感情が不安定になる、同じ話をくり返す、などの行動 |
| 第5群 社会生活への適応 | 薬の内服、金銭管理、買い物、調理 |
| その他 | 過去14日間に受けた特別な医療 |
このほか、家族の状況や住まいの環境などを聞く「概況調査」と、選択肢では表しきれない介護の手間を調査員が書く「特記事項」がある。危険のない範囲で、実際に体を動かしてもらって確認する項目もある。
厚労省のテキストは、調査員に対して「本人と介護者の双方から聞き取りをするよう努める」「家族など実際の介護者が不在の日は避ける」と定めている。介護者がいないまま調査した場合は、そのことを特記事項に書くことになっている。
同席したときに家族ができるのは、ふだんの様子を具体的に伝えることだ。調査の日に本人ができた動作でも、ふだんはできていないことがある。テキストでも、調査のときの様子と日頃の様子が違う場合は、日頃の状況を具体的に特記事項に書くよう求めている。「週に何回、どんな場面で、どんな手助けをしているか」を伝えると、調査員が記録しやすい。
本人の前では言いにくいこともあるだろう。刈谷市は、メモを渡す、本人とは別の部屋で伝える、といった方法を案内している。伝えたいことは事前に紙に書いておくといい。調査を受けるにあたって特別な準備はいらない、とも刈谷市は書いている。
同席がどうしても難しいときは、申請時や日程調整の電話で相談しておく。テキストでは、一人暮らしや施設入所の人についても、日頃の状況を知っている家族や職員に立ち会いを求めるよう努めるとされている。
入院中でも申請はできる。横浜市の申請書には入院先の病院名や病棟・部屋番号を書く欄がある。訪問調査は病院で行い、日時は市が病院と相談して決める(刈谷市)。
注意点は2つある。
また、病院での調査は感染症対策などで家族が同席できないことがある(刈谷市)。その場合は看護師が同席する。退院後に在宅の介護サービスを使う予定なら、申請の時期を病院の相談窓口にも相談しておくといい。
認定の効力は申請日にさかのぼるので、結果が出る前でもサービスを使い始めることはできる。その場合は、ケアマネジャー(要支援が見込まれる場合は地域包括支援センター)に「暫定ケアプラン」を作ってもらう必要がある(東京都中央区 よくある質問)。
ただしリスクもある。
結果を待たずに使う必要があるかどうかを、ケアマネジャーと相談してから決めたい。
結果は、要支援1・2、要介護1〜5、非該当(自立)のいずれかで届く。北九州市の案内による状態の目安は次のとおりだ(北九州市)。
| 区分 | 状態の目安(北九州市の案内を要約) | 使えるサービス |
|---|---|---|
| 要支援1 | 基本的な動作はほぼ自分でできるが、家事などで何らかの支援が必要 | 在宅サービス |
| 要支援2 | 要支援1より、家事などの能力がわずかに低下している | 在宅サービス |
| 要介護1 | 家事などの能力が一部低下し、部分的な介護が必要 | 在宅サービス・施設サービス |
| 要介護2 | 要介護1に加え、日常の動作にも部分的な介護が必要 | 同上 |
| 要介護3 | 日常の動作も家事なども著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要 | 同上 |
| 要介護4 | さらに動作能力が低下し、介護なしでは日常生活が難しい | 同上 |
| 要介護5 | 介護なしでは日常生活がほぼ不可能 | 同上 |
| 非該当 | 介護保険のサービスは使えない | 介護予防事業など |
施設サービスのうち特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上が対象になる。申し込んでも空きを待つことが多いので、待つあいだの選択肢は「特養に入れないときの選択肢」にまとめた。
認定には有効期間がある。新規申請の場合は原則6か月だ(船橋市)。続けてサービスを使うには更新申請が必要になる。
要介護1〜5なら、居宅介護支援事業者のケアマネジャーにケアプラン(介護サービス計画)を作ってもらう。要支援1・2なら、地域包括支援センターが介護予防ケアプランを作る(益田市)。
ケアプランの作成費用に利用者の自己負担はない。介護保険から全額支払われる。また、本人の意向でケアマネジャーを変えることもできる(京都市 介護サービス計画の作成)。
ケアマネジャーとは長い付き合いになる。最初の面談では、本人と家族がどんな暮らしを続けたいか、家族はどこまで手伝えるか、仕事の都合で連絡がつく時間帯はいつか、を伝えておくと、その後のやりとりがしやすい。地域包括支援センターに相談すれば、近くの居宅介護支援事業所を教えてもらえる。
在宅での介護が難しく、施設への入居を考えるなら、探す順番と施設の種類の違いを「親の老人ホームの探し方」にまとめている。
まずは市区町村の窓口に相談する。神戸市は、認定調査票や主治医意見書などの審査資料を入手し、判定の経緯について説明を受けることを勧めている(神戸市 認定結果に不服がある場合)。
それでも不服がある場合は、都道府県の介護保険審査会に審査請求ができる。期限は、結果通知を受け取った日の翌日から3か月以内だ(神戸市)。
一方、認定を受けたあとに心身の状態が変わった場合は、審査請求ではなく区分変更申請を出す。区分変更申請では、改めて認定調査と主治医意見書をもとに判定が行われる(船橋市 認定結果に納得できないとき)。
介護保険のサービスを利用するには、要介護・要支援認定を受ける必要がある(船橋市)。認定がないままヘルパーやデイサービスを使うと、介護保険は使えず自費になる。認定の効力は申請日にさかのぼるが、申請日より前にはさかのぼらない。
益田市の案内では、介護サービスの利用を希望する場合や、支援や介護が必要と思われる場合に申請する、としている(益田市)。申請してから結果が出るまで全国平均で約40日かかるので、「サービスを使いたい」と思った時点で動くのが目安になる。介護が必要かどうか家族だけで判断がつかないときは、地域包括支援センターに状況を話して相談すればいい。
家族が代わりに申請書を出すことはできる。ただ、訪問調査は本人に会って行うもので、正当な理由なく調査に応じない場合は申請が却下されることがある(厚生労働省 認定調査員テキスト)。家族だけで説得しようとする前に、地域包括支援センターに状況を相談しておきたい。
郵送で受け付ける自治体がある(横浜市・船橋市など)。マイナポータルの「ぴったりサービス」でオンライン申請できる自治体もある(横浜市・船橋市)。訪問調査は親の住まいで行うので、日程を調整して同席できるとよい。難しい場合は、地域包括支援センターに代行を頼む方法がある。離れて暮らす親の見守りは、市区町村の事業と、郵便局・民間のサービスで、対象も費用も違う。違いは「高齢者の見守りサービス」にまとめた。
市区町村の「介護予防・日常生活支援総合事業」がある。益田市の場合、65歳以上の人は窓口で「基本チェックリスト」を受け、生活機能の低下が見られれば、要介護認定を受けなくても一部のサービス(介護予防・生活支援サービス事業)を使える。40〜64歳の人は要介護認定の申請が必要だ(益田市)。
介護保険のサービス(介護給付・予防給付)は使えないが、北九州市では非該当の人などのうち生活機能の低下が見られる人は、介護予防事業を利用できるとしている(北九州市)。状態が変わったら、もう一度申請することもできる。
ケアプランにもとづくサービスの利用者負担は、原則として費用の1〜3割だ(益田市)。何割になるかは、認定結果とあわせて交付される「介護保険負担割合証」に書かれている。
様式や受付方法は市区町村ごとに違うので、申請前に一度、自治体のページを見ておくと二度手間を防げる。
lg.jp が入っていることが多い)のページを開くページを読んでもわからないときは、介護保険の担当課か地域包括支援センターに電話で聞けばいい。
最初の一歩は、親の住所を担当する地域包括支援センターに電話することだ。申請書がそろっていなくても、状況を話せば何から始めればいいかを教えてもらえる。
