親の老人ホームを探し始めると、「老人ホーム紹介センター」「入居相談室」といった名前の会社がたくさん出てくる。相談も見学の手配も無料だという。便利そうだが、無料と言われると、かえって何か裏があるのではと気になる人もいるだろう。
この記事では、紹介センターがなぜ無料なのか、その仕組みから何に気をつければいいのかを整理する。紹介センターを使わずに探す方法も並べておくので、使うかどうかを決める材料にしてほしい。
※制度や数字は2026年10月時点で、厚生労働省の公開資料と事業者団体の公式ページで確認できた範囲のものだ。
紹介センターを使っても利用者が料金を払わないのは、入居が決まったときに、施設の側から紹介会社へ紹介手数料が支払われるからだ。いわゆる成功報酬で、紹介会社の収入は基本的にこの手数料だけになる(高齢者住まい事業者団体連合会 厚生労働省検討会 提出資料、2025年4月28日)。
| 誰が | 誰に | 何を払うか |
|---|---|---|
| 入居する本人・家族 | 紹介会社 | 払わない(相談・見学同行などは無料) |
| 入居する本人・家族 | 施設 | 入居一時金や月額の家賃・管理費・食費など |
| 施設 | 紹介会社 | 成約したときに紹介手数料 |
入居の契約は、施設と本人が直接結ぶ。紹介会社は契約の当事者ではない。厚生労働省の資料でも、入居希望者と紹介会社のあいだには「契約書なし・手数料なしがほとんど」と整理されている(厚生労働省 有料老人ホームの現状と課題について(追加資料)、2025年6月20日)。
業界団体の高齢者住まい事業者団体連合会(以下、高住連)が2025年に行った実態調査では、紹介会社ごとの紹介手数料の平均額は20万円台で、月額家賃の1〜2か月分にあたる会社が約半数だった。一方で、がん末期や難病の人について、月額家賃に比べて高額な手数料を設定している例も確認されている(厚生労働省 有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 とりまとめ、2025年11月5日)。
手数料は施設が払うものなので、利用者の請求書に載ることはない。ただ、施設の運営費の一部であることには変わりない。
不動産の仲介業者は宅地建物取引業法で免許制になっていて、重要事項の説明や手数料の上限が決まっている。老人ホームの紹介会社は、施設の情報を提供しているだけで仲介ではないとされ、宅建業法の規制は受けない。厚生労働省の検討会の資料には「現在、紹介事業者に対して法規制は存在しない」と書かれている(同とりまとめ)。
いまあるのは、業界団体による自主的な届出の仕組みだ。これは後で詳しく書く。
紹介センターを使うかどうかを考えるうえで、知っておいてほしい経緯がある。
2024年秋、一部の有料老人ホームが、入居者が難病などの場合に、紹介会社へ1人あたり最高150万円(平均の約6倍)を支払っていたと報道された。要介護度や医療の必要度に応じて高い手数料を払う、という形が、社会保障費の使い方として問題視された(同とりまとめ)。
その後の動きは次のとおりだ。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年11月8日 | 厚生労働省が高住連に、紹介会社の届出公表制度の見直しを要請 |
| 2024年12月6日 | 厚生労働省が有料老人ホームの標準指導指針を改正。社会保障費の不適切な使い方を助長すると誤解される手数料を設定しない・応じないことを明記 |
| 2025年1月 | 高住連が、届出をする紹介会社の遵守項目を改定 |
| 2025年11月5日 | 厚生労働省の検討会がとりまとめを公表。紹介会社の「優良事業者認定」の仕組みを作る方向を示す |
| 2026年6月 | 「社会福祉法等の一部を改正する法律」が成立(6月25日公布)。有料老人ホームを届出制から登録制に改める |
2026年の検討会資料では、登録制の施行は公布から2年以内とされている。登録の申請書には、紹介会社を使う場合の手数料設定の考え方を書かせる案が示されている。紹介会社の優良事業者認定制度は、創設に向けて2026年度に調査研究と認定基準の検討を進めるとされている(厚生労働省 検討会 第8回 資料3、2026年7月29日、同 第9回 資料2、2026年9月18日)。
つまり、2026年10月の時点では、紹介会社を見分ける公的な認定はまだない。使う側が自分で確かめる必要がある。
紹介会社が紹介できるのは、手数料の契約を結んでいる施設だけだ。高住連の遵守項目でも、紹介会社は「個別に提携している高齢者向け住まいを紹介していること(すべての高齢者向け住まいから紹介しているわけではないこと)」を利用者に説明するとしている(高住連 紹介事業者届出公表制度)。
紹介会社と提携していない施設は、そもそも候補に出てこない。親の家のすぐ近くに施設があっても、その会社と提携していなければ紹介されないということだ。
全国に拠点を置く会社もあれば、一つの県や市だけで営業している会社もある。提携しているホームの数も会社ごとに違う。高住連の検索ページでは、届出をした会社の提携法人数・提携ホーム数・紹介できるエリア・相談方法(対面か、電話・オンラインか)が公表されている(高住連 提出資料)。
親が住みたい地域で、その会社がどれだけの施設と提携しているかは、最初に聞いておきたい。
紹介の仕事には、資格も行政への届出もいらない。高住連自身が、厚生労働省の検討会で「電話一本で誰でも始められるビジネス」になっており、相談の質に差がある懸念を課題として挙げている(同資料)。高住連は相談員向けの基礎講座(eラーニング)を用意しているが、2025年4月時点で受講した相談員は届出相談員の約3割だった。
同じ会社でも担当者によって知識や対応は変わりうる。話がかみ合わないと感じたら、担当者を変えてもらうか、別の会社に相談すればいい。
紹介会社は、入居が決まらなければ収入にならない。そのため、決断を急がせる力が働きやすい構造ではある。高住連の遵守項目でも、「必要以上に不安をあおり契約を迫る」勧誘は、消費者契約法に触れるおそれのある例として挙げられている(高住連 紹介事業者届出公表制度)。
「この部屋はすぐ埋まる」と言われても、見学や比較を省く理由にはならない。紹介会社への相談は契約ではないので、途中でやめるのも自由だ。断るときは「家族で考え直します」と伝えれば足りる。
使ってよい。会社ごとに提携先が違うので、2社に聞けば候補は広がる。
ただし、同じ施設を2社から紹介されると、施設と紹介会社のあいだでどちらに手数料を払うかの問題が起きる。高住連の遵守項目には、紹介が重なったときの扱いをあらかじめ決めておくことが含まれている。利用者が困ることではないが、すでに見学した施設や、別の会社から紹介を受けた施設は、正直に伝えておくと話がこじれにくい。
相談する前に確かめること
いくつか補足しておく。
届出は任意なので、届出をしていない会社がすべて悪いわけではない。ただ、届出をした会社は上の遵守項目に同意しており、守らない場合は高住連が公表を取り消すことがある。確かめる手がかりとしては使える。届出事業者は2025年4月時点で629あった(同とりまとめ)。
「業界No.1」「すべてのホームを紹介」といった表現は、高住連の遵守項目で、景品表示法に触れるおそれのある例として挙げられているものだ。お祝い金・キャッシュバックで客を集めることも、倫理に反する行為の例として示されている。
厚生労働省の検討会のとりまとめでは、紹介会社が自分の立場、施設から手数料を受け取ること、手数料の算定方法を、入居希望者に事前に書面で示す対応が必要だとしている。いまは義務ではないが、聞いたときにきちんと答えられるかは、その会社の姿勢を見る材料になる。
紹介会社に任せきりにしないために、次のことは家族で先に話しておくと、提案された施設を自分たちで判断しやすい。
家族で先に決めておくこと
まだ要介護認定を受けていないなら、先に申請しておくと話が進めやすい。施設によっては入居の条件に要介護度が入っているからだ。申請のしかたは「介護保険の申請は家族が代わりにできる」にまとめている。
紹介センターは手段の一つにすぎない。次の方法と組み合わせると、提携先以外の施設も視野に入る。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談などを行う機関として市町村が設置している。全国に5,487か所(支所を含めると7,374か所、2025年4月末)ある(厚生労働省 地域包括ケアシステム)。特定の施設から手数料を受け取る立場ではないので、地域にどんな施設があるかを聞く最初の窓口になる。
すでに介護サービスを使っているなら、担当のケアマネジャーは親の状態をよく知っている。地域の施設の評判や、親の状態に合う施設の種類について意見をもらえる。
有料老人ホームは、老人福祉法にもとづいて施設の情報を都道府県知事などに報告し、都道府県などはそれを公表することになっている(厚生労働省 事務連絡 2021年6月23日)。千葉県のように、各施設の重要事項説明書を県のサイトで公開している自治体もある(千葉県 有料老人ホームの経営状況等の報告について)。「(都道府県名) 有料老人ホーム 一覧」で検索すると、自治体のページが見つかることが多い。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、特別養護老人ホームなどの介護保険施設に加え、2021年から有料老人ホームも検索できるようになった。ただし、有料老人ホームの登録はまだ十分ではなく、掲載されていない施設が多数あると検討会でも指摘されている(同とりまとめ)。ここに載っていないから存在しない、とは考えないほうがいい。
気になる施設があれば、紹介会社を通さずに直接見学を申し込める。2020年度の国の調査研究では、高齢者住まいへの入居ルートで最も多いのは「本人・家族からの直接申込み」で、紹介会社経由は介護付きの施設(特定施設)で25%程度、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で1割程度だった(同とりまとめ)。
紹介手数料は施設が払うもので、利用者が紹介会社に料金を払うことはない。ただし手数料は施設の運営費の一部ではある。気になる場合は、紹介会社を通した場合と直接申し込んだ場合で費用や条件が同じかを、施設に確かめるとよい。
その必要はない。利用者と紹介会社のあいだには、通常は契約も料金も発生しない。紹介された施設がどれも合わなければ、断ってかまわない。
してよい。会社ごとに提携している施設が違うので、候補が広がる。同じ施設を別の会社から重ねて紹介されることがあるので、すでに見学した施設や紹介を受けた施設は、担当者に伝えておくと手配がこじれにくい。
紹介会社が紹介できるのは、手数料の契約を結んだ提携先に限られる。特別養護老人ホームが候補に入るかどうかは、その会社に確かめる必要がある。特別養護老人ホームの申込み方法は、市区町村の介護保険の窓口か地域包括支援センターに聞くのが確実だ。
高齢者住まい事業者団体連合会の紹介事業者届出公表制度に届出をしているかが一つの手がかりになる。届出をした会社は、提携先しか紹介しないことの説明や、お祝い金で客を集めないことなどの遵守項目に同意している。国の優良事業者認定制度は創設に向けて検討中で、2026年10月時点ではまだ無い。
最初の一歩としては、親の住所を担当する地域包括支援センターに、地域にどんな施設があるかを聞いてみるのがいい。そのうえで紹介センターを使うなら、高住連の検索ページで届出を確かめてから相談すれば、比べる目を持ったまま話を聞ける。
