親の介護が在宅では難しくなってきて、老人ホームを探そうと思っても、何から手をつければいいのかわからない。施設の名前を調べ始めると、特養、老健、サ高住、グループホームと種類が多く、費用も条件もばらばらに見える。
この記事では、親の施設探しを進める順番と、施設の種類ごとの違いを整理する。種類を絞り込むためのフローチャート、認知症の親の場合に気をつけること、見学で確かめることのチェックリスト、費用の見通しの立て方もまとめた。
※制度や金額は2026年10月時点で、厚生労働省と自治体の公式ページで確認できた範囲のものだ。入居の条件や費用は施設ごと、自治体ごとに違うので、最後は必ず個別に確かめてほしい。
老人ホーム探しは、次の順番で進めると迷いにくい。いきなり施設の一覧を見始めるより、先に「親の状態」と「出せる費用」を決めておくほうが、候補がずっと絞りやすくなる。
STEP
状態と希望の整理
要介護度、医療的なケアの有無、認知症の有無、住みたい地域、月々払える金額を家族で書き出す
STEP
相談先に聞く
地域包括支援センターやケアマネジャーに、地域にどんな施設があるかを聞く。必要なら紹介センターも使う
STEP
種類を絞り込む
要介護度と費用、医療の必要度から、候補になる施設の種類を2〜3つに絞る
STEP
情報収集と見学
重要事項説明書を取り寄せ、2〜3か所を見学して比べる。体験入居ができれば使う
STEP
申込み・契約
契約書と重要事項説明書を読み、退去の条件や前払金の返還を確かめてから契約する
まだ要介護認定を受けていないなら、最初に申請しておく。施設によっては、入居の条件に要介護度が入っているからだ。申請のしかたは「介護保険の申請は家族が代わりにできる」にまとめている。
施設を比べる前に、次のことを家族で書き出しておく。相談先に話すときも、これがあると話が早い。
家族で先に整理しておくこと
医療的なケアが必要かどうかは、家族が判断しなくていい。施設が受け入れられるかどうかに直結するので、主治医や入院先の相談窓口に確認しておく。
費用は、親の年金と預貯金から出せる範囲で考えるのが基本だ。子どもが仕送りで補う場合は、何年続けられるかまで見ておくと、あとで無理が出にくい。
最初の相談先として一番使いやすいのが、親の住所を担当する地域包括支援センターだ。高齢者の総合相談や権利擁護などを行う機関で、全国に5,487か所(支所を含めると7,374か所、2025年4月末)ある(厚生労働省 地域包括ケアシステム)。相談は無料で、特定の施設を勧めて手数料を受け取る立場でもない。地域の特養の申込み方法や、自治体独自の制度もここで聞ける。
すでに介護サービスを使っているなら、担当のケアマネジャーに相談する。親のふだんの様子を知っているので、どの種類の施設が合いそうか、地域の施設の評判はどうかについて意見をもらいやすい。
民間の紹介センターは、相談や見学の手配を無料で引き受けてくれる。ただし、無料なのは入居が決まった施設から紹介手数料を受け取る仕組みだからで、紹介されるのは提携している施設に限られる。仕組みと注意点は「老人ホーム紹介センターはなぜ無料?」で詳しく書いた。特別養護老人ホームのような公的な施設は、紹介センターの候補に入らないことがあるので、地域包括支援センターへの相談と組み合わせて使うといい。
主な施設と住まいを、運営、入居の条件、費用の傾向、看取りや医療への対応で比べると次のようになる。
| 種類 | 運営 | 入居の主な条件 | 費用の傾向 | 看取り・医療の対応 |
|---|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 介護保険施設。社会福祉法人が約95% | 原則要介護3以上。要介護1・2は特例入所あり | 所得によっては低額。多床室か個室かで居住費が変わる | 生活の場。看取りまで行うことも多い |
| 介護老人保健施設(老健) | 介護保険施設。医療法人が約76% | 要介護1以上 | 特養と同じく、所得に応じた軽減制度の対象 | 在宅復帰を目指してリハビリを受ける施設。入所期間は短い |
| 介護医療院 | 介護保険施設。医療法人が約89% | 要介護1以上 | 特養と同じく、所得に応じた軽減制度の対象 | 日常的な医学管理が必要な人の長期療養と生活の場。看取り・ターミナルの機能がある |
| 介護付き有料老人ホーム | 主に民間企業 | おおむね60歳以上。要介護者専用のホームと、自立の人も入れるホームがある | 入居時に前払金が必要な場合が多い。月額はホームごとの差が大きい | ホームの職員が介護を行う。看取りへの対応はホームごとに違う |
| 住宅型有料老人ホーム | 主に民間企業 | おおむね60歳以上。条件はホームごとに違う | 前払金方式と月払い方式がある。介護は使った分が別にかかる | 介護は外部の介護サービスを自分で選んで契約する |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 主に民間企業 | 60歳以上、または要介護・要支援認定を受けている人 | 賃貸借契約が多く、月払いが一般的。敷金が要ることがある | 安否確認と生活相談が必須。介護は原則として外部サービスを使う |
| 認知症高齢者グループホーム | 介護保険の認知症の人向けサービス。運営者は施設ごとに確認 | 要支援2以上で認知症の人。施設のある市区町村に住んでいる人に限られる | 施設ごとに違う | 5〜9人の少人数で共同生活し、施設の職員が介護を行う |
| ケアハウス(軽費老人ホーム) | 老人福祉法の老人福祉施設 | 60歳以上で、独立して暮らすことに不安がある人 | 低額な料金で利用できる | 介護が必要になると退所を求められることがある。施設の職員が介護を行うところもある |
この表は次の資料をもとにまとめた。設置主体の割合と老健・介護医療院の性格は厚生労働省「高齢者施設・障害者施設等における医療 参考資料」(2023年4月)、入居の条件は大阪府 高齢者施設種別と愛知県 高齢者向け施設のご案内、有料老人ホーム・サ高住・ケアハウスの特徴は東京都「あんしん なっとく 有料老人ホームの選び方」。
いくつか補足しておく。
表を見ても迷うときは、次の順に質問に答えていくと、候補になる種類が絞れる。あくまで入口の目安で、最後は個々の施設の条件で決まる。
質問1:要介護認定を受けているか
質問2:日常的な医学管理や医療処置が必要か(主治医に確認する)
質問3:認知症の診断を受けているか
質問4:要介護3以上か
質問5:入居時にまとまったお金を出せるか
認知症の診断を受けている親の施設を探すときは、いくつか確かめておくことが増える。
候補の施設が見つかったら、パンフレットだけでなく重要事項説明書を取り寄せる。有料老人ホームは、入居の相談があったときや求めがあったときに重要事項説明書を渡すことになっている。契約前には、十分な時間的余裕をもって説明することも求められている(厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針、2024年12月6日最終改正)。
施設を横に並べて比べるには、厚生労働省の介護サービス情報公表システムも使える。ただ、有料老人ホームは掲載されていない施設が多いと国の検討会で指摘されている(厚生労働省 有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 とりまとめ、2025年11月5日)。載っていない施設は、自治体の公表情報や施設への問い合わせで補う。
見学は2〜3か所を同じ観点で回ると比べやすい。できれば食事の時間帯に行き、親本人も一緒に見る。
見学で確かめること
有料老人ホームについては、契約前に体験入居の機会を確保するよう国の指針で求められている(同指針)。実際に1泊でも過ごすと、パンフレットではわからない夜の様子や食事が見える。
特養は、申し込んでもすぐに入れるとは限らない。入所の順番は各施設の入所検討委員会が決め、重度の人が優先されるため、空きが出るまで待つことがある。申込みの窓口や方法は自治体ごとに違うので、親の住む市区町村か地域包括支援センターに確かめる。
有料老人ホームの支払い方法には、前払金方式、月払い方式、どちらかを選べる方式がある。前払金方式は入居時にまとまったお金が要るかわりに、毎月の支払いが少なくなる(東京都の同資料)。
前払金を払う場合は、次のことを契約前に確かめておく。
国の指針は、退去の予告期間を設けて返還の対象になる期間を事実上短くするような契約で、入居者の利益を不当に害してはならないとしている(同指針)。解約の予告期間が何日かも、契約書で確かめておきたい。
施設の費用は、大きく分けて「入居時の費用」と「毎月の費用」がある。施設ごとの差が大きいので、ここでは見通しの立て方だけを書く。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 居住費・家賃 | 部屋代。特養などでは多床室か個室かで変わる |
| 食費 | 1日3食分。施設ごとに設定されている |
| 管理費・サービス費 | 有料老人ホームやサ高住で、共用部の維持や生活支援の費用として |
| 介護保険の自己負担 | 介護サービス費用の1〜3割 |
| 日常生活費など | おむつ代、日用品、理美容、医療費など |
特養・老健・介護医療院では、食費と居住費の平均的な費用として、厚生労働大臣が「基準費用額」を決めている。2026年8月からは食費が1日1,545円(7月までは1,445円)、居住費は特養の多床室で1日915円、ユニット型個室で1日2,066円だ(名護市 介護保険負担限度額認定について)。食費の基準費用額の100円引き上げは、2026年8月1日施行の厚生労働省告示によるものだ(愛知県 食費の基準費用額変更に伴う運営規程変更の取扱いについて)。
これはあくまで基準の額で、実際の金額は施設との契約で決まる。
住民税非課税の世帯などで、預貯金などが一定以下の人は、申請して「負担限度額認定」を受けると、特養・老健・介護医療院とショートステイの食費・居住費が軽くなる。有料老人ホームは対象外だ(名護市の同資料)。親の所得と預貯金で当てはまりそうなら、市区町村の介護保険の窓口に聞く。
介護サービスの自己負担(1〜3割)は、同じ月の合計が上限を超えると、超えた分が「高額介護サービス費」として払い戻される。ただし、施設での食費、居住費、日常生活費は対象にならない(高山市 利用者負担の軽減)。上限額は所得によって違う。
入居が長く続くこともある。何年分まかなえるかを先に見ておくと、途中で住み替えを迫られる心配が減る。
親の要介護度、医療的なケアの有無、住みたい地域、払える金額を家族で整理し、親の住所を担当する地域包括支援センターに相談するのが最初の一歩になる。要介護認定をまだ受けていなければ、先に申請しておく。
原則は要介護3以上だが、要介護1・2でも、やむを得ない事情で在宅での生活が著しく困難な場合は、特例入所が認められることがある。当てはまるかどうかは、市区町村や地域包括支援センター、申し込む施設に相談する。
サ高住は賃貸借契約が多く、安否確認と生活相談が必ず付く住まいで、介護は原則として外部のサービスを使う。有料老人ホームは利用権契約が多く、介護付きならホームの職員が介護を行う。ただ、個々の住まいによる違いも大きいので、契約の形と介護の受け方を個別に確かめる。
グループホームは要支援2以上で認知症の人が対象で、施設のある市区町村に住んでいることが条件になる。ほかの施設でも認知症の人を受け入れているところはあるが、受け入れの範囲は施設ごとに違うので、入居と退去の条件を確認する。
決まりはないが、2〜3か所を同じ観点で比べると違いが見えやすい。食事の時間帯に行き、重要事項説明書を事前に読んでおくと、確かめたいことを絞って聞ける。
有料老人ホームの前払金は、入居後3か月以内に契約が終わった場合、利用した分などを差し引いて返す契約を結ぶことが決められている。3か月を過ぎてからの返還額は契約ごとに違うので、計算方法を契約前に確認する。
最初の一歩は、親の住所を担当する地域包括支援センターに電話して、地域にどんな施設があるかを聞くことだ。家族で整理したメモがあれば、そのまま話の材料になる。
