親の特別養護老人ホーム(特養)に申し込んだのに、いつ空くのかわからない。施設に聞いても「順番をお待ちください」としか言われない。そのあいだにも在宅での介護は続き、家族の疲れはたまっていく。
この記事では、特養に入れないときに家族が取れる手を整理する。待機者の数、入所の順番の決まり方、待つあいだに使えるサービス、民間施設に切り替える目安も並べた。
※制度や数字は2026年10月時点で、厚生労働省と自治体の公式ページで確認できた範囲のものだ。申込みの方法や入所の決め方は自治体ごと、施設ごとに違うので、最後は必ず親の住む市区町村か申込み先の施設に確かめてほしい。
特養に入れないときは、空きを待ちながら、次の4つを同時に進めるのが現実的だ。
STEP
申込みを見直す
申込み先を増やせるか、申込書の内容がいまの状態に合っているかを確かめる。状態が変わっていれば変更を届け出る
STEP
待機中の在宅介護を組み立て直す
ケアマネジャーと相談して、訪問・通い・ショートステイを増やし、家族の負担を下げる
STEP
老健・介護医療院を検討する
リハビリや医療的な管理が必要なら、介護保険のほかの施設が候補になる
STEP
民間施設を並行して探す
介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サ高住、グループホームなどを、費用の見通しを立てたうえで比べる
どれから手をつけるかは、親の状態と家族の余力で決まる。迷ったら、親の住所を担当する地域包括支援センターか、担当のケアマネジャーに「特養の空きを待っているが、在宅が限界に近い」とそのまま伝えるのが早い。
まだ要介護認定を受けていない、または認定が実際の状態より軽く出ていると感じる場合は、申請や区分変更の申請から始める。特養は原則として要介護3以上が対象なので、認定の結果がそのまま申込みの可否に関わる。申請のしかたは「介護保険の申請は家族が代わりにできる」にまとめている。
厚生労働省は、特養に申し込んでいて、まだ入所していない人(入所申込者)の数を、都道府県を通じて定期的に集計している。最新は2025年12月25日に公表された、2025年4月1日時点の調査だ(厚生労働省 特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度))。
| 区分 | 2025年度調査 | 2022年度調査(前回) |
|---|---|---|
| 要介護3以上 | 20.6万人 | 25.3万人 |
| うち在宅で待っている人 | 8.6万人 | 10.6万人 |
| 要介護1・2(特例入所の対象) | 1.8万人 | 2.2万人 |
| うち在宅で待っている人 | 0.9万人 | 1.1万人 |
要介護3以上の申込者は、前回より4.7万人(18.4%)減った。それでも全国で約20万人が、どこかの特養の空きを待っていることになる。
この数字は、複数の施設への重複申込みや、申し込んだあとに亡くなった人などを除いて、実際の人数に近づけるよう集計したものだ。一方で厚生労働省は、長く名簿に載ったままの人も含まれていて、必ずしも「いますぐ入所が必要な人」だけの数ではない、と注意書きをつけている(同資料)。
同じ調査では、要介護認定を受けた人の数に対する、要介護3以上の入所申込者の割合も都道府県別に出ている。全国では8.6%だが、低いところでは愛知県の4.4%、高いところでは山梨県の21.3%と、県によって大きく違う(同資料 参考3)。
地域で特養がどれだけ足りているかは、こうした差に表れる。親の住む地域の状況は、全国の数字よりも、市区町村や地域包括支援センターに聞くほうが正確だ。
「特養は何年待ち」という言い方をよく見かけるが、待機期間を全国でまとめた公的な統計は見当たらなかった。待つ期間は、地域の施設の数、申し込んだ施設、親の要介護度や家族の状況によって大きく変わる。
自治体によっては目安を公表しているところもある。たとえば東京都江東区は、区内施設の入所者について、申請から入所までの平均待機期間を約12か月としている。ただし同じページで、あくまで平均であり、長く待つ可能性もあると書いている(江東区 特別養護老人ホームの入所申し込みについて)。これは江東区の例で、ほかの地域にそのまま当てはまるものではない。
待つ期間の見通しを知りたいときは、申し込んだ施設か市区町村の窓口に「いま何番目くらいか」「最近はどれくらいで入所しているか」を聞いてみるといい。答えられる範囲は施設や自治体によって違うが、聞くこと自体は問題ない。
特養は、申し込んだ順番に入れる仕組みではない。国の運営基準で、介護の必要の程度や家族の状況などを考えて、入所の必要性が高い人を優先して入所させるよう努めることが定められている。
具体的な決め方は、厚生労働省の通知「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」に沿って、自治体と関係団体が地域ごとの「入所指針」を作っている。通知では、次のような考え方が示されている(厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について、2014年12月12日通知、2017年3月29日一部改正)。
つまり、同じ施設に同じ時期に申し込んでも、要介護度が重い人、介護する家族がいない・高齢である人のほうが先になることがある。順番が動かないと感じたら、施設に入所指針を見せてもらうと、何が評価されているかがわかる。
2015年4月から、特養に新しく入れるのは原則として要介護3以上になった。要介護1・2の人は、在宅での生活が難しいやむを得ない事情がある場合に限って、特例として入所できる。同じ通知では、考慮する事情として次の4つを挙げている(同通知)。
申込者の側からこれらに当てはまると申し立てた場合、施設は申込みを受け付けないという扱いをしてはいけない、とも通知は定めている。当てはまるかどうかの判断には市区町村も関わるので、要介護1・2で申し込むときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら申込書を書くといい。
申込みの方法は地域によってかなり違う。2つの例を挙げる。
| 東京都江東区の例 | 福岡県北九州市の例 | |
|---|---|---|
| 申込み先 | 区内施設は区に申し込む(法人枠を除く) | 入所を希望する施設に直接申し込む |
| 申込みのしくみ | 区の名簿で優先順位を決め、空きが出た施設へ区が推薦する | 第1希望の施設で、同時に3施設まで申し込める |
| 入所検討の時期 | 区の入所検討委員会を年3回開く | 施設の入所検討会議は原則年2回 |
| 入所を断ったとき | 区内施設を断ると、申込みは原則すべて取下げになる | 第2・第3希望の施設を断ると、その施設の名簿から外れる(入院中など特別な事情を除く) |
出典は江東区 特別養護老人ホームの入所申し込みについてと北九州市 特別養護老人ホームの入所決定方法。どちらも一つの自治体の例で、ほかの地域が同じとは限らない。
ここから言えるのは、「複数の施設に申し込めば早く入れる」とは一概に言えないということだ。申し込める数に上限がある地域もあれば、自治体がまとめて順位をつける地域もある。順番が来たときに断ると申込みが取り消される扱いもあるので、申し込む施設は見学してから決めておきたい。
申込み後に状況が変わったら、必ず届け出る
入所の順番は、申込書に書かれた内容をもとに決まる。要介護度が上がった、介護していた家族が入院した、親が入院した、住所や連絡先が変わった、といったときは、申込み先に変更を届け出る。江東区では、要介護度や居場所、連絡先などが変わったときに連絡するか、申込書(兼変更届)を出し直すよう案内している(江東区の同ページ)。
届け出ないままだと、いまの状態が順番に反映されない。
特養を待つあいだの介護を、家族だけで抱え込む必要はない。在宅のまま使えるサービスと、特養以外の介護保険施設を並べておく。どれを組み合わせるかは、ケアマネジャーと相談して決める。
まずは、いまのケアプランが家族の負担に見合っているかを見直す。訪問介護、デイサービス、訪問看護などの回数を増やせないか、ケアマネジャーに相談する。
相談するときは、夜に何回起こされるか、介護している家族の体調や仕事の状況まで具体的に伝えると、プランを組み直す材料になる。
ショートステイは、施設に短期間泊まって介護を受けるサービスだ。介護している家族が休む時間をつくる手段として、待機中の在宅介護を支える柱になる。
ただし、ずっと泊まり続けられるわけではない。宇都宮市の案内では、ショートステイは連続30日を超えて利用することは認められず、保険の対象になる利用日数は原則として要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないこととされている。30日を超えて続けて使った場合、31日目は全額自己負担になる(宇都宮市 短期入所サービスの連続利用等)。退所予定日に在宅へ戻れない事情がある場合の扱いなどは自治体ごとに決めているので、長く使う必要が出てきたら、早めにケアマネジャーから市区町村に相談してもらう。
ショートステイの食費と滞在費は、所得が低い人向けの「負担限度額認定」の対象になる(名護市 介護保険負担限度額認定について)。
一つの事業所が、「通い」を中心に、必要に応じて「訪問」と「泊まり」を組み合わせて提供するサービスだ。1事業所の登録定員は29人以下で、介護報酬は要介護度別の月単位の定額になっている(厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料 小規模多機能型居宅介護、2023年6月28日)。
同じ資料では、どのサービスを使ってもなじみの職員が対応する点が特徴に挙げられている。いまのデイサービスや訪問介護をどう組み替えるかは、ケアマネジャーと相談して決める。
老健は、リハビリなどを通じて心身の機能の回復を図り、自宅での生活に戻ることを目指す介護保険施設だ。運営の基準でも、入所者の居宅での生活への復帰を目指すものでなければならない、とされている(厚生労働省 高齢者施設・障害者施設等における医療 参考資料、2023年4月)。
そのため、特養のように長く暮らす場所ではない。同じ資料では、2019年の調査で平均在所日数は特養が1,177日、老健が310日だった。退院後すぐに自宅で介護するのが難しく、リハビリが必要な場合に候補になる。
老健を出たあとの行き先は人によってさまざまだ。同じ資料によると、2019年の調査で老健を退所した人の行き先は、家庭が36.3%、医療機関が33.3%、特養が9.1%だった。逆に特養を退所した人について入所前にいた場所を見ると、家庭が32.0%、医療機関が22.8%、老健が16.6%で、老健から特養に移る人も一定数いる。
ただし、老健は特養の空きを待つための施設として作られたものではない。入所できる期間や退所の判断は施設ごとに違うので、入所の前に「特養の申込みをしている」ことを伝え、どれくらいの期間いられるかを確かめておく。
介護医療院は、長期にわたって療養が必要な人に、療養上の管理、看護、医学的な管理のもとでの介護、必要な医療、日常生活の世話を行う介護保険施設だ。同じ資料では「医療の必要な要介護高齢者の長期療養・生活施設」と位置づけられている。医療的なケアが日常的に必要で、特養や民間施設では受け入れが難しいと言われた場合の候補になる。どの程度のケアが必要かは家族が判断せず、主治医や入院先の相談窓口に意見を聞く。
特養を待つか、民間の施設に移るかは、どちらか一方に決めなくてもいい。特養の申込みを残したまま民間施設を探す道もある。施設の種類ごとの違いは「親の老人ホームの探し方」で表にまとめたので、ここでは切り替えを考える目安だけを書く。
民間施設を本格的に検討するサイン
最初の3つは、家族と本人の安全に関わる。家族が倒れてからでは選択肢が狭くなるので、限界が近いと感じたら早めに相談先に伝えてほしい。
特養・老健・介護医療院と、ショートステイでは、住民税非課税の世帯などで預貯金が一定以下の人は、申請して「負担限度額認定」を受けると食費と居住費が軽くなる。この制度は有料老人ホームは対象外だ(名護市の同資料)。
所得が低い親の場合、特養なら軽減を受けられたのに、民間施設では食費も家賃も全額になる、ということが起こりうる。切り替える前に、次の順で費用を比べておく。
民間施設に入ったあとも特養の申込みを続けられるかは、申込み先の扱いによる。たとえば江東区の案内で申込みができないとされているのは、「すでに特別養護老人ホーム(区内施設に限らない)に入所している方」だ(江東区の同ページ)。
ただ、入所の優先順位を決めるときに、いまどこで待っているかを評価に入れる自治体もある。北九州市は、入所判定の基準を見直す際に「待機場所など特別の状況」をより重視するようにしたと説明している(北九州市の同ページ)。居場所が変わると優先度の評価も変わりうるので、申込みを残す場合は、居場所が変わったことを申込み先に届け出たうえで、扱いがどう変わるかを確かめておく。
地域包括支援センターやケアマネジャーに聞くほか、急いで候補を集めたいときは民間の老人ホーム紹介センターに相談する方法もある。相談は無料だが、紹介されるのは提携先の施設に限られる。仕組みと選び方は別の記事にまとめた。

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厚生労働省の最新の調査(2025年4月1日時点)では、要介護3以上の入所申込者は20.6万人で、そのうち在宅で待っている人は8.6万人だった。要介護1・2の特例入所の対象者は1.8万人。前回の2022年度調査(要介護3以上で25.3万人)からは減っている。
待機期間を全国でまとめた公的な統計は見当たらない。地域の施設数、申し込んだ施設、本人の要介護度や家族の状況で大きく変わる。目安を公表している自治体もあるので、申込み先の施設か市区町村の窓口に、最近の入所の状況を聞くのが確実だ。
申し込んだ順ではない。国の通知に沿って自治体と関係団体が作る入所指針にもとづき、施設の入所検討委員会が、要介護度や家族の状況などから入所の必要性が高い人を優先して決める。
何か所まで申し込めるか、どこに申し込むかは自治体によって違う。北九州市のように同時に3施設までとする例や、江東区のように区がまとめて受け付ける例がある。順番が来て断ると申込みが取り消される扱いもあるので、親の住む市区町村か地域包括支援センターに確かめる。
扱いは申込み先によって違う。江東区のように、申込みができないのを特養にすでに入所している人に限っている例がある一方、いまどこで待っているかを入所の優先順位の評価に入れる自治体もある。民間施設に入ったら居場所の変更を申込み先に届け出て、申込みの扱いがどうなるかを確認しておく。
老健は自宅での生活に戻ることを目指す施設で、特養の空きを待つための施設ではない。老健から特養に移る人もいるが、いられる期間は施設ごとに違うので、入所前に確かめる。
最初の一歩は、親の住所を担当する地域包括支援センターかケアマネジャーに、特養を待っていること、家族がどれくらい限界に近いかをそのまま伝えることだ。そこから、待つあいだの支えと、次の住まいの候補の両方を一緒に考えてもらえる。