高額介護サービス費とは、1か月に払った介護サービスの利用者負担(原則1〜3割)の合計が、所得に応じた上限額を超えたとき、超えた分が申請により払い戻される制度だ。根拠は介護保険法第51条にある。上限額は世帯の所得で5段階に分かれ、月15,000円から140,100円までの幅がある。
介護サービスを使い始めた親の自己負担が月に数万円になると、「このあと、どこまで増えるのか」が気になる。この制度は、その天井にあたる。ただし、食費・居住費・日常生活費など、保険の対象外の費用は含まれない。特別養護老人ホーム(特養)などの食費・居住費を軽くする「負担限度額認定」は、別の制度だ。
この記事の数字は、2026年11月5日に厚生労働省と自治体の公式ページで確かめたもので、年度で変わることがある。親の区分や戻る額は、住んでいる市区町村が判定する。ここでは個別の判断はしない。まだ要介護認定を受けていない場合は、先に「介護保険の申請は家族が代わりにできる」を見てほしい。
介護サービスを使うと、費用の一部を利用者が負担する。負担割合は原則1割で、所得に応じて2割・3割になる(厚労省 介護サービス情報公表システム)。この利用者負担が1か月の合計で上限額を超えると、超えた分が介護保険から払い戻される。
押さえておく点は3つある。
出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」、相模原市 高額介護(介護予防)サービス費、e-Gov法令検索 介護保険法(確認日2026年11月5日)。
上限額は、世帯の所得で次の5段階だ。表は2026年11月5日時点で、令和8年度(2026年8月から)の内容。
| 区分(対象) | 上限額(月額) | 備考 |
|---|---|---|
| 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) | 2021年8月から |
| 課税所得380万円(年収約770万円)以上690万円未満 | 93,000円(世帯) | 2021年8月から |
| 課税所得380万円(年収約770万円)未満の市町村民税課税世帯 | 44,400円(世帯) | 2017年8月から |
| 世帯全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) | |
| 上の非課税世帯のうち、前年の公的年金等収入金額とその他の合計所得金額の合計が82.65万円以下の人、老齢福祉年金を受けている人 | 15,000円(個人) | 82.65万円の基準は2026年8月から |
| 生活保護を受けている人など | 15,000円(個人) | |
| 上限額を15,000円に下げることで、生活保護を受けずに済む場合 | 15,000円(世帯) |
年収の「約770万円」「約1,160万円」は課税所得に対応する目安で、判定は課税所得で行う。生活保護を受けている人など、個別の人がどの区分に当たるかは、ここでは判断しない。市区町村の窓口で確かめてほしい。
出典:厚労省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます(PDF)、厚労省 介護サービス情報公表システム、大田区 高額介護サービス費の支給(更新2026年7月24日)、世田谷区(最終更新2026年10月27日)、富田林市 介護サービスにかかる費用(2026年8月1日更新)(確認日2026年11月5日)。
上限額の経緯は次のとおりだ。厚労省の資料によると、2017年8月に一般区分が37,200円から44,400円になり、2021年8月に年収約770万円以上・約1,160万円以上の区分(93,000円・140,100円)が加わった。
2026年8月に変わったのは、15,000円(個人)を使える人の収入の基準額だ。80.9万円から82.65万円になった。厚労省の介護保険最新情報(Vol.1506、2026年5月29日)には、令和7年の老齢基礎年金(満額)が80.9万円を超えたためという趣旨の注がある。上限額そのもの(140,100円・93,000円・44,400円・24,600円・15,000円)は変わっていない。 大田区は「令和3年8月分から」「令和7年8月分から」「令和8年8月分から」の3つの表を載せていて、どの表も上限額は同じで、変わっているのは15,000円の基準額の欄だけだ。富田林市も、令和8年8月1日からの表で同じ金額と82.65万円を示している。
出典:厚労省 介護保険最新情報 Vol.1506(2026年5月29日)、大田区、富田林市(確認日2026年11月5日)。
上限額を変える改定が決まったという公式資料は、2026年11月5日時点で確認できていない。
今後変わる場合は、厚生労働省や市区町村の発表で確かめることになる。
出典:厚労省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(2025年12月25日)、同 第137回 資料1(2026年10月26日)(確認日2026年11月5日)。
区分は市区町村が判定し、サービスの利用割合を示す「介護保険負担割合証」とは別のものだ。申請書や「お知らせ」に区分が書かれていることが多い。分からなければ、市区町村の介護保険の窓口かケアマネジャーに聞くのがいい。世帯分離との関係など、個別の判定はここでは扱わない。
対象になるのは、保険給付の対象になる介護サービスの利用者負担(1〜3割)の合計だ。在宅のサービスも、施設のサービスも含む。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 保険給付の対象になる在宅・地域密着型・施設の介護サービスの利用者負担(1〜3割)の合計 | 福祉用具購入費・住宅改修費の自己負担分、食費・居住費(滞在費)・日常生活費など保険給付の対象外の費用、支給限度額を超えた分 |
出典:世田谷区(最終更新2026年10月27日)、高山市 利用者負担の軽減(PDF、2025年8月版)、厚労省 介護サービス情報公表システム(確認日2026年11月5日)。高山市の資料は基準額が古い版なので、金額は使わず、対象と対象外の文言だけ参照した。
「自費分はいくらか」という疑問は、2つに分けて考える。
どちらも、公式ページに書かれた事実を並べただけで、「いくらまで減る」とはここでは言えない。
戻る額は、次の式で考える。
戻る額 = 同じ世帯の1か月の利用者負担(対象になるもの)の合計 − その世帯の上限額
以下は、仕組みを説明するための数字で、実際の人や世帯の例ではない。
世帯に利用者が複数いる場合の按分は、高山市や相模原市のページに書かれている。支給額の計算や端数の扱いは、自治体が行う。
必要だ。厚労省の介護サービス情報公表システムは、支給を受けるには市区町村への申請が必要としている。ただ、該当する人には、市区町村から申請書やお知らせが送られる自治体が多い。公式ページに書かれた例は次のとおりだ。
| 自治体 | 公式ページの記載(確認日2026年11月5日) |
|---|---|
| 世田谷区 | 該当する人に、おおむね3か月後に通知を送る |
| 相模原市 | おおむね3か月後に申請書を送る。申請受付月の翌々月の初旬に支給決定通知、通知から2週間以内に振込 |
| 大田区 | 利用月のおおむね2か月後に、申請書を郵送する |
| 鹿児島市 | 一度申請して口座を届け出ると、次回以降は自動で振り込まれる |
| 富田林市 | 初回に申請書を送る。翌月以降は申請不要で、自動で振り込まれる |
出典:世田谷区、相模原市、大田区、鹿児島市、富田林市、厚労省 介護サービス情報公表システム。
表の時期は、それぞれの自治体の案内で、全国の目安ではない。書いていない自治体もある。通知が来ないときや時期が不明なときは、市区町村の介護保険の窓口に聞く。理由を推測せず、いつ・どの書類を出したかを伝えるといい。
介護保険法第200条は、保険給付を受ける権利は、行使できる時から2年で時効によって消滅するとしている。世田谷区は「申請書を送付してから2年以内に返送がない場合はお支払いができません」と案内している(介護保険法第200条・地方自治法第236条第1項に基づく)。起算日の書き方は自治体で違う可能性がある。申請書や通知が届いたら、後回しにしないほうがいい。
世田谷区と鹿児島市は、マイナポータルの電子申請を案内している。岡山市は窓口か郵送だ。全国で同じではないので、親の市区町村のページで確かめる。
施設に入っている人や入院中の人について、上限額だけを施設に払う「受領委任払い」を設けている自治体がある。富田林市のページには、これを令和8年12月利用分で終了するとある。これは富田林市の取り扱いで、全国の話ではない。自分の自治体の案内で確かめてほしい。
鹿児島市は、本人が亡くなっていて新規に申請する場合は誓約書、本人以外の口座に振り込む場合は委任状が必要と案内している。必要な書類は自治体で違うので、この記事では一般化せず、窓口に聞く。
出典:世田谷区、鹿児島市、岡山市、富田林市、e-Gov法令検索 介護保険法(確認日2026年11月5日)。
施設に入ると、費用が介護サービスの自己負担だけではなくなる。高額介護サービス費の範囲と、食費・居住費を軽くする制度を分けて読んでほしい。
特養・介護老人保健施設(老健)・介護医療院でも、施設サービスの利用者負担(1〜3割)は対象だ。食費・居住費・日常生活費は対象外になる(世田谷区、高山市)。
介護保険法第8条は、特定施設入居者生活介護(介護付きの有料老人ホームなど)を「居宅サービス」、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)を「地域密着型サービス」と定めている。第51条の高額介護サービス費は、居宅サービス・地域密着型サービス・施設サービスの利用者負担を合わせて計算する。そのため、介護付き有料老人ホームとグループホームの介護サービス費の自己負担は、対象として扱われる。
住宅型の有料老人ホームでは、入居者が外部の訪問介護やデイサービスなどを使う。その介護サービスの自己負担も対象だ。
対象外なのは、家賃・食費・管理費・上乗せ介護費など、保険給付の外の費用だ。ホームの請求書は、介護サービスの自己負担と、それ以外の費用が分かれているかを確かめるといい。内訳が分からない場合は、ホームや市区町村の窓口に聞く。有料老人ホームの種類と費用の見通しは、「親の老人ホームの探し方」にまとめている。
出典:e-Gov法令検索 介護保険法 第8条・第51条(確認日2026年11月5日)。
特養・老健・介護医療院とショートステイの食費・居住費を軽くする制度は、「負担限度額認定」(特定入所者介護サービス費・補足給付)といい、高額介護サービス費とは別の制度だ。厚労省の資料では、世帯全員が市町村民税非課税などの条件に加えて、預貯金などが一定額以下であることが要件になっている。預貯金の目安は、第1段階が1,000万円(夫婦で2,000万円)、第2段階が650万円(同1,650万円)、第3段階①が550万円(同1,550万円)、第3段階②が500万円(同1,500万円)以下だ。市区町村に申請して認定を受ける。
| 高額介護サービス費 | 負担限度額認定 | |
|---|---|---|
| 何を軽くするか | 介護サービスの利用者負担(1〜3割)の月の合計 | 施設・ショートステイの食費・居住費 |
| 対象となる場面 | 在宅・施設の介護サービス全般 | 特養・老健・介護医療院とショートステイ |
| 条件 | 世帯の所得区分で上限額が決まる | 世帯全員が市町村民税非課税、預貯金が一定額以下 |
| 手続き | 申請(初回のみで以降は自動の自治体がある) | 申請して認定を受ける |
| 窓口 | 市区町村の介護保険の窓口 | 市区町村の介護保険の窓口 |
出典:厚労省 介護サービス情報公表システム(最終更新2026年9月28日)、厚労省 介護保険最新情報 Vol.1506(2026年5月29日)(確認日2026年11月5日)。
負担限度額の日額は、令和8年(2026年)8月から次のとおりだ。表には、特養の食費と居住費だけを載せる。ショートステイの食費は別の額なので混ぜていない。
| 基準費用額 | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | |
|---|---|---|---|---|---|
| 食費 | 1,545円 | 300円 | 390円 | 680円 | 1,420円 |
| 居住費(特養の多床室) | 915円 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 居住費(ユニット型個室) | 2,066円 | 880円 | 880円 | 1,370円 | 1,470円 |
出典:厚労省 介護保険最新情報 Vol.1506、厚労省 介護サービス情報公表システム(確認日2026年11月5日)。
特養に入るまでの話は「特養に入れない理由と、民間施設との費用の差」に書いた。負担限度額認定の有無で、特養の月額が変わることもそちらで触れている。
なお、特養の1か月の合計額の例が公式ページに載っていることがあるが、施設サービス費の1〜3割分を含む。これを「高額介護サービス費で戻る額」と混ぜないようにしたい。
介護サービスの費用は、一部が医療費控除の対象になる。高額介護サービス費として払い戻しを受けたときの扱いは、国税庁のタックスアンサーに書かれている。
どちらも令和8年4月1日現在の法令等に基づく内容だ。この記事では、この2点を伝えるにとどめる。医療費控除を受けられるか、いくらになるか、申告書の書き方は、国税庁のNo.1120・No.1125・No.1127か、税務署・税理士に確かめてほしい。
出典:国税庁 タックスアンサーNo.1125、No.1127、No.1120(確認日2026年11月5日)。
高額介護サービス費は、介護の自己負担の上限だ。医療の自己負担の上限は、医療保険の高額療養費という別の制度が受け持つ。この2つとは別に、「高額医療・高額介護合算療養費」という制度がある。同じ医療保険の世帯内で、医療と介護の両方に自己負担がある場合に、1年分を合算して年額の限度額を超えた分が支給される。申請先は加入している医療保険者だ(厚労省 介護サービス情報公表システム)。
限度額の金額は、この記事では書かない。医療保険の高額療養費は2026年に見直しが報じられていて、合算制度の限度額も現行のものかを確かめられていないためだ。医療保険の窓口か、市区町村のページで確かめてほしい。
出典:厚労省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(確認日2026年11月5日)。
保険給付の対象になる介護サービスの利用者負担(1〜3割)だ。福祉用具購入費・住宅改修費の自己負担、食費・居住費・日常生活費、支給限度額を超えた分は対象外になる。介護付き有料老人ホームやグループホームの介護サービスの自己負担も対象だ。
世帯の所得で5段階あり、140,100円・93,000円・44,400円・24,600円(いずれも世帯)と、15,000円(個人)だ。2026年8月に変わったのは、15,000円を使える人の収入の基準額(80.9万円から82.65万円)だけで、上限額は変わっていない。
必要だ。ただ、該当する人に自治体から申請書やお知らせが届く例が多い。一度申請すれば、次回以降は自動で振り込まれる自治体がある。申請の期限は、介護保険法第200条で2年だ。
対象になる介護サービスの自己負担は、払い戻しにより、上限額が天井になる。食費・居住費・日常生活費は別にかかり、施設との契約で決まる。特養などの食費・居住費は、負担限度額認定で軽くなる場合がある。
自治体で必要な書類が違う。鹿児島市は誓約書や委任状を案内している。この記事では判断せず、市区町村の窓口に聞くことを勧める。
世田谷区は、該当する人におおむね3か月後に通知すると案内している。時期は自治体で違う。まず市区町村の介護保険の窓口に聞く。原因は、ここでは推測しない。
別の制度だ。高額療養費は医療の自己負担、高額介護サービス費は介護の自己負担の上限を決める。両方を合算する制度が、高額医療・高額介護合算療養費だ。
次の一歩は、親の市区町村の高額介護サービス費のページを開き、区分と申請の案内を確かめることだ。届いている通知や申請書があれば、期限を先に見ておくといい。
確認日はすべて2026年11月5日。制度や自治体の案内は変わることがあるので、申請の前に最新の公式ページを確かめてほしい。
